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防災に役立つ情報



エスカレーターで立ち止まっていますか? 第80回

「想定外の原因」で事故は起きた

2008年5月9日午前8時頃、朝の通勤通学ラッシュ時間帯で混み合う名古屋市営地下鉄久屋大通駅の上りエスカレーターが突然止まり逆走、利用者14人が軽傷を負った。
モーターなどが固定されていた台座のボルトが折れた上に台座自体がずれるという、関係者にとって想定外の原因により、二重化されている緊急停止装置も効かず、利用者の荷重で一気に逆走したものとみられている。

事故を起こしたエスカレーターは8ヶ月前の定期点検で、台座を留めるボルト6本のうち2本が破損していることが確認され、残る4本に加え溶接等で4箇所を留める補強工事が行われていた。
その後の1ヵ月毎の定期点検で異常は見られなかったものの、事故後ボルト3本が破断、溶接した4箇所もずれていたという。

国土交通省指示の緊急点検で、事故機と同型の都営地下鉄2駅のエスカレーター計4基でもそれぞれボルト1本の破断が確認されている。
管理体制が今後問われることになると思われる一方、日夜多くの利用者を乗せているエスカレーターの負荷の大きさを改めて実感させられる事故である。

相次ぐエスカレーター事故

ここ1年ほど、エスカレーターに関する話題をよく耳にする。
2007年8月、神奈川県川崎市のJR川崎駅自由通路で、女性がエスカレーターの立て板部の破損部につま先を挟み左足親指切断の重傷を負う事故が発生。
管理者である川崎市やメーカーの担当者が書類送検されている。
2007年10月には神奈川県平塚市のスーパーで男児がスロープ式エスカレーターと壁の間に首を挟まれ、一時意識不明の重体となった。
後日、事故防止用のアクリル製保護板の長さが建築基準法の基準を満たしていなかったことが判明し、設置工事責任者が書類送検されている。
なお2008年4月にも、同じエスカレーターで女児が転倒し左手薬指切断の重傷を負っている。

また、2007年夏には、流行の樹脂性サンダルがエスカレーターのステップに巻き込まれる事故が全国各地で60件以上も発生、子供を中心に負傷者も出たことから、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)が9月に注意喚起を行った。
2008年5月にはNITEがモニタリングテスト結果を公表し、ビーチサンダルや長靴では危険性がほとんどないのと比べ、軟らかさが特徴の発泡性樹脂素材を用いたサンダルがエスカレーターに巻き込まれやすいことが実証されている。

東京消防庁の調査によると、2003年1月から2004年3月末までの15ヶ月間で発生した救急事故約83万件の事故のうち、エスカレーターに関する負傷者は実に1,014人。
単純計算でも東京だけで1日あたり2人以上が搬送されている計算になるが、その大半が幼児と高齢者で占められている。
日常から考えると、幼児や高齢者の利用時の危険性の高さがうかがい知れる。
それゆえ、エスカレーターの正しい乗り方について知識を習得する必要がある。
NITEも報告書の結論で「こうした巻き込まれ事故は、エスカレーターの正しい乗り方を理解し守っていれば、防げることは言うまでもない」としている。
踏み台は端部に「デマケーションライン」と呼ばれる黄色い線で縁取られており、線を踏まずに内側に立ち、手すり(ハンドレール)をしっかり持てば、安全かつ快適に移動することが出来るのである。

エスカレーター内の歩行も「想定外」

そして、エスカレーターの正しい乗り方として意外と知られていないのが、エスカレーター内での歩行禁止だ。
関東・関西でステップの片側を開ける「右あけ」「左あけ」が異なることを「習慣」の差として取り上げられることがあるが、社団法人日本エレベータ協会によると、エスカレーターの安全基準は、ステップ上に立ち止まって利用することを前提にしており、歩行する振動や片側に荷重が偏ることで機器に不具合が生じる可能性もあるとして歩行禁止を呼びかけている。

実際に高齢者を中心に、歩行者とぶつかりそうになったなどとして危険に感じているとの調査結果も出ていることから、交通事業者を中心にエスカレーター内での歩行禁止を呼びかける動きが出てきている。
中でもいち早く2004年7月から呼びかけていたのが、実は名古屋市営地下鉄であった。

安心・安全な利用を

ハートビル法・交通バリアフリー法が2006年12月にバリアフリー新法として統合された。
公共施設を中心にエスカレーターやエレベーターなどの設置がますます進むこととなると共に、ビルの高機能化や地下鉄新線の深度化により利用が欠かせない存在となってゆくだろう。
その一方で、2004年3月の六本木ヒルズ自動回転ドア事故、2006年6月の東京港区マンションエレベーター暴走事故と、身近な機械であるがゆえに社会に大きな衝撃を与える事故も発生している。

利用者には防ぎ切れない事故については、メーカーや設置者へ最大限の予防を強く期待するが、利用者自身も、安心・安全な利用を心がける、特に幼児の利用には保護者が厳に注意を働かせるなど、日頃から「もしものとき」に備えることが肝要であろう。
危険は身近なところにも潜んでいるのである。

(文・レスキューナウ危機管理情報センター専門員 宝来英斗)

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(c)レスキューナウ

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